農薬検査部について
農薬の検査技術に関する調査研究報告
平成20年度
① 農薬登録に係るOECDテストガイドライン等の国際的枠組の策定に当たり、これが我が国へ導入された場合の可否の検討
水産動植物への影響評価に係るテストガイドラインの開発・検証
- 幼若ホルモン様農薬のミジンコ類に対する影響調査(3) (PDF:142KB)
前年度に引き続き、OECDテストガイドライン211(TG211)の改訂案について、その試験法の問題点等検証を行った。
昆虫成長制御剤(IGR剤)であるテフルベンズロンを供試してオオミジンコ繁殖試験を実施した結果、産仔に雄は含まれず、ピリプロキシフェンの暴露による影響とは異なる結果となった。また、塩化ナトリウムを供試して繁殖試験を実施した結果、産仔に雄は含まれなかった。
これらの結果は、ピリプロキシフェンの暴露に伴って産仔に雄が含まれるという現象は、特異性が高いものであることを示している。
水産動植物への影響評価に係るテストガイドラインの開発・検証
- ウキクサ生長阻害試験の我が国への導入の可否の検討 (PDF:126KB)
農薬の水産植物への影響を評価するための試験法としてOECDが採択した「ウキクサ生長阻害試験(TG221)」について、我が国への導入の可否を検証するための試験を実施した。
本年度は予備的な検討として、アオウキクサ(Lemna paucicostata)を用いた生長程度の調査、微細な藻類等を除去したアオウキクサの培養株の作成(無藻類化)及び継代培養の検討を行った。
その結果、SIS培地による生長程度については十分な生長が得られなかった。その要因としては前培養期間の不足及び藻類の混入が考えられた。ウキクサの無藻類化については、次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた方法で藻類の除去を試み、汚染のない個体を得ることができた。また、無藻類化したアオウキクサの継代培養について温度条件を検討した結果、6℃以上の温度がアオウキクサ維持に必要であることが明らかになった。
作物残留試験に係るテストガイドラインの改善・整備
- 作物残留性の外挿に係る検討 (PDF:212KB)
作物残留性試験の結果を他の作物において利用する作物残留性の外挿に係る検討のため、文献の集取・解析を行うとともに、類似の残留性を示す可能性が高く、要望が多いと思われるカリフラワーとブロッコリーを用いた作物残留性試験を実施した。
同じビニールハウス内で同時期にカリフラワーとブロッコリーを栽培し、双方に登録のある4農薬を供試して処理1,3,7,14日後の残留量を比較した。
その結果、いずれの農薬においてもカリフラワーよりブロッコリーの方が残留濃度が高くなる傾向が見られた。なお、今回の分析法では定量限界付近での添加回収試験において良好な回収率が得られなかったため、分析法の更なる改善が必要であると考えられた。
作物残留試験に係るテストガイドラインの改善・整備
- 土壌を経由した後作物への農薬残留に関する調査研究 (PDF:603KB)
後作物残留性に関する事例調査の一つとして、稲育苗箱からの農薬溶出量確認試験を行った。
4種類の農薬を施用した土壌を育苗箱に入れ、27日間灌水して溶出量を求めたところ、溶出量は主にそれぞれの農薬の水溶解度に依存していた。
また、育苗箱の下に活性炭入り不織布を敷き、溶出水中の農薬の除去効果を調査したところ、通過量が半分になる効果が認められたが、その効果を十分と判断するには至らなかった。
② 残留農薬基準の対象品目拡大等に対応した新たな検査手法の開発
農薬製剤の簡易判別手法の開発
- FT-IRを用いた製剤分析方法の確立 (PDF:664KB)
マラソン50%乳剤(7処方61種類)について透過法で赤外スペクトルを測定し、近赤外領域の吸光度データ(多変量データ)について主成分分析による解析を行った。
その結果、昨年実施したMEP50%乳剤の判別結果と同様に処方の判別が可能であった。
また、11種の澄明液体製剤について透過法で赤外スペクトルを測定し、中赤外領域を含むスペクトルについて主成分分析による解析を行った結果、各製剤の判別が可能であることが明らかになった。
主成分分析による解析で異なる判定が得られる同一処方のMEP50%乳剤について要因を検討したところ、HPLCによる分析結果から補助成分であるキシレンの組成(工業用キシレンの成分であるo,m,p-キシレン及びエチルベンゼンの含有率)がその主要因であることが明らかになった。
③ その他の研究課題
農薬製剤の簡易判別手法の開発
- クロピラリドの作物体残留量の把握(3) (PDF:176KB)
新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(旧・先端技術を活用した農林水産高度化事業)「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策の確立」に参画し、クロピラリドの作物残留分析法の検討及び作物残留試験を実施した。本課題は一昨年度より3カ年計画で取り組んでいるものである。
本年度は、こまつな及びブロッコリーについて分析法を検討するとともにクロピラリド残留堆肥を施用した土壌で作物を栽培し作物残留試験を行った。ブロッコリーの分析法において一部微修正が必要であったものの昨年度までにキャベツ等4作物で確立した分析法が適用可能であった。
作物残留試験の結果、<0.01~0.03ppmのクロピラリド残留が認められ、ブロッコリーの栽培では残留基準値(2ppm)を超えることはなかったが、こまつなの栽培では堆肥(クロピラリド0.15ppm含有)6t/10a処理区で、一律基準値(0.01ppm)を超える残留が認められた。