このページの本文へ移動

農薬検査部について

農薬の検査技術に関する調査研究報告

平成21年度

① 農薬登録に係るOECDテストガイドライン等の国際的枠組の策定に当たり、これが我が国へ導入された場合の可否の検討

作物残留試験に係るテストガイドラインの改善・整備

  • 作物残留性の外挿に係る検討(第二報) (PDF:262KB)
     なす科果菜類に属するナス,ピーマン,トマト (ミニトマト) を同一圃場にて栽培し,農薬散布後の作物中農薬濃度を経時的に測定した。
     試料採取時における各作物の平均重量はトマトに対してピーマンは約1.5倍、ナスは約6倍大きく、作物中農薬濃度は重量が小さい作物で高くなる傾向が見られた。農薬散布後の経過日数に伴う農薬濃度の推移は作物により異なった。農薬散布から試料採取までの期間における重量変化が小さいトマトでは,ピーマンと比較して農薬濃度の減衰が緩やかであった。
     なす科果菜類において作物のグループ化および作物残留性の外挿を検討する際には、作物 (食用部位) の重量および農薬散布から試料採取までの期間における重量変化を考慮する必要性が示唆された。

作物残留試験に係るテストガイドラインの改善・整備

  • 土壌を経由した後作物への農薬残留に関する調査研究(第二報) (PDF:590KB)
    4種の育苗箱施用剤について、土壌からカブおよび小麦への吸収移行性をポット試験により調査した結果、水溶解度が高く、水・オクタノール分配係数 (log Pow) が低い農薬の吸収移行性は高かった。
     次に、農薬の水溶解度およびlog Powと吸収移行性の関係についてより詳細に把握するため、4種の育苗箱施用剤の中で最も高い吸収移行性を示した農薬と水溶解度及びlog Powが異なる4種の農薬について、土壌からカブおよびホウレンソウへの吸収移行性をポット試験により調査した。
     水溶解度が500 mg/l以上で、log Powが1以下の農薬で吸収移行性は顕著に高かった。農薬の土壌吸着性 (Koc) に着目すると、Kocが低い農薬ほど吸収移行性が高くなる傾向を示したため、水溶解度とlog Powに加え土壌吸着性が農薬の作物への吸収移行性に関与していることが考えられた。
     ポット試験と同一の農薬を用いて圃場で後作物残留性の検証を行ったところ、ポット試験で土壌から作物への吸収移行性が高かった農薬は、圃場試験での作物中濃度が高かったため、極性が高く、土壌吸着性が低い農薬は後作物へ残留しやすいことが考えられた。

② 残留農薬基準の対象品目拡大等に対応した新たな検査手法の開発

農薬製剤の簡易判別手法の開発

  • FT-IRを用いた製剤分析方法の確立(第二報) (PDF:700KB)
     固形農薬製剤について赤外スペクトルの測定手法を検討した結果、試料の前処理を必要としないATR法(全反射測定法)が簡易で有用であることが明らかになった。
     固形農薬製剤の補助成分として使用頻度の高い鉱物質および無機化合物についてATR法で赤外スペクトルを測定し、形状を比較したところ、クレーで明確な差が認められた。標準粘土のスペクトル形状から考察すると、今回測定したクレーはろう石クレーと珪石クレーに分類されることが示唆された。
     固形農薬製剤(53剤)の赤外スペクトル(波数範囲650-4000 cm-1)の測定値について主成分分析を施し、二次元でのデータ解析を行った結果、散布図上で製剤間における赤外スペクトルの違いが確認された。固形製剤の処方判別には、ATR法で測定した赤外スペクトルの主成分分析の結果が有用であると考えられた。

▲このページの先頭に戻る