農薬検査部について
農薬の検査技術に関する調査研究報告
平成23年度
① 経済協力開発機構(OECD)の農薬登録に係る試験成績の作成に関する指針等の国際的枠組みの策定及び国内導入に当たり必要な課題
農薬の河川一次生産者(水生植物)に対する環境影響評価手法の高度化の検討
- ミジンコウキクサを試験生物とした生長阻害試験法の検討 (PDF:434KB)
ミジンコウキクサ (Wolffia globosa) を試験生物とした生長阻害試験法を検討した。ミジンコウキクサはSIS培地 (Swedish standard medium) で良好な生長が認められた。Lemna属ウキクサに対する生長阻害試験の試験指針 (OECD-TG221) の環境条件下で培養したところ、7日間の培養で約10倍 (葉状体数) の生長が認められ、ミジンコウキクサの生長速度がOECD-TG221の基準を満たしていることを確認した。より簡易な試験法開発のため、試験容器として48wellのマルチディッシュプレート (48 wellプレート) の使用を検討した。基準物質 (3,5-ジクロロフェノール) を被験物質として生長阻害試験を行った結果、葉状体数から算出した生長速度を基に算出した半数生長阻害濃度は、100 mLビーカー、48 wellプレートを試験容器とした試験でそれぞれ3.06、3.10 mg/Lであり、同程度の結果が得られた。以上の結果より、OECD-TG221に準じた試験における試験生物として、ミジンコウキクサが有用であることが示唆された。また、微小なミジンコウキクサを試験生物とした特徴を生かし、生長阻害試験の試験容器として、48 wellプレートが利用できると考えられた。
② 農薬の使用に伴う農作物・環境への安全の確保に必要な課題
- 農業生産現場で生産者自らが使える農薬残留判定技術の開発-水抽出法の検討- (PDF:259KB)
7種のネオニコチノイド系殺虫剤および3 種の代謝物について、ピーマンおよびトマトを供試作物とし、水を抽出溶媒として用いた抽出法 (以下、水抽出法) による一斉分析法を検討した。水抽出法では、供試化合物の大部分がろ液 (以下、水抽出液) に分配することが確認された。水抽出法での供試化合物の回収率は、添加濃度の低下に伴う著しい低下は見られず、添加濃度0.01-1.00 mg/kg で高い割合 (78.7-125.2 %) を示した。水抽出液と有機溶媒抽出液を外観で比較すると、水抽出液では作物色素による着色がほとんど認められなかったため、試料由来の共抽出が少ないと考えられた。親化合物だけでなく代謝物の回収率も高いことから、水抽出法は供試化合物10種を一斉かつ定量的に抽出できる手法であるとともに、ELISA法 (免疫化学的測定法) などのスクリーニング分析の抽出法として有用であることが示唆された。